
都心から約 1 時間 15 分。千葉県南部、鋸南町の山裾に広がる計画地は、東京湾とサンセットを正面に抱き、冬の澄んだ日には富士山まで見通せる稀有な場所です。足元には田園がひらけ、背後には樹木の密度を感じさせる山が迫ります。海と森、開放と包まれ感が同居するこの土地は、四季の輪郭をそのまま暮らしへ連れ込むような豊かさを宿しています。
ここに計画するのは、一棟貸しのサウナヴィラです。敷地の環境そのものを滞在価値へ変換することを目指し、海と山を抜ける風を受け止める外気浴、井戸水を用いた水風呂、夕陽と富士山を望むリビングを設計の核に据えました。自然の気配を「眺め」だけに留めず、肌感覚へ落とし込むことを大切にしています。
敷地は農作業の履歴を残す三段の雛壇状地形を成し、高さごとに異なる景色を持っています。造成して均すのではなく、この段差を居場所の多層性へ転化するために、三つの手法を設定しました。「囲む」ことで安全性と安心感を確保し、「段々形状を活用」することで土工事を抑え、建築と擁壁を一体的に計画しています。さらに「傾ける」ことで周辺からの視線を整えつつ、内部からの眺望を立ち上げ、この土地でしか成立しない姿を導きました。
建物は段々状の断面を持つ平屋として構成しています。下段にプールとテラス、中段にLDKと二つのベッドルーム、上段にサウナと外気浴スペースを配置し、屋上には露天風呂を計画しました。段差は単なる条件ではなく、滞在のリズムをつくる装置です。夕陽が沈む時間に身体の感覚を取り戻し、自然に身を委ねながら静かにリセットされていきます。日本が本来持つ季節と風土の豊かさを、現代のリトリートとしてかたちにしました。











