
沖縄県北部、今帰仁村の高台に計画された本建築は、森と海を一望できる自然豊かな環境に寄り添うリゾートヴィラです。敷地からは眼下に広がる緑の海原、遠くに広がる青い水平線、そして夜には満天の星空を望むことができ、この地ならではの圧倒的な風景と調和した建築が求められました。
設計の出発点となったのは、沖縄の伝統的な住まいに見られる「アマハジ」という軒下空間です。強い日差しやスコールから暮らしを守りながら、人々が集い、自然と共に過ごしてきたこの半屋外空間のあり方を現代のリゾート建築に継承しました。深い軒は強い気候条件をやわらかく受け止めると同時に、内と外を滑らかにつなぐ“居場所”を生み出しています。
屋根はわずかに「く」の字に折り曲げることで構造的な剛性と軒の深さ、2階の天井高を同時に確保。内部には大開口を設け、焼杉の勾配天井が内外をつなぎ、光や風、風景の移ろいを建築の中へと導きます。室内から眺める自然は、窓を額縁にした静かな一枚の絵となり、空間に豊かさをもたらします。
テラスには外ダイニングやプールを設置し、天候に左右されずにBBQや遊泳といったアクティビティを楽しむ事ができる設えとしました。浴槽には、温泉効果を持つ肌に優しい湯を堪能でき、空と森を切り取った窓からは夕日が沈む様を望むことができます。
加えて、軒で受け止めた雨水を建物下部に貯留し、ろ過システムを経て生活用水や浴槽水として再利用。災害時には飲料水としても活用可能な備えを整え、環境の恩恵を受け入れた建築としています。
時間とともに深まる滞在体験を生む、静謐で力強いリゾートヴィラを実現しつつ、風土に寄り添い、先人の知恵を継承しながら、現代のヴィラにふさわしい豊かさを再構築した建築を目指しました。
AMAHAJI














YANBARU













AO NAKIJIN


計画地 | 沖縄県国頭郡今帰仁村 |
主要用途 | ホテル |
工事種別 | 新築工事 |
構造・規模 | RC造・地上2階 |
設計・監理 | 株式会社Fuu 渡辺 裕貴 |
インテリアデザイン | 株式会社Fuu 渡邊 広美 |
構造 | 田中哲也建築構造計画 |
設備 | 株式会社前田設備設計事務所 |
施工 | 株式会社カモメトラスト |
敷地面積 | 「amahaji」211.68㎡ 「yanbaru」191.33㎡ |
延床面積 | 「amahaji」131.49㎡ 「yanbaru」118.19㎡ |
撮影 | 鳥村鋼一写真事務所 |
雨水濾過浄化システム
天の恵みを活かす、新しい水のかたち
沖縄は豊かな降雨量を持ちながらも、石灰岩層の影響により地下へと水が浸透しやすく、古くから水資源の確保に様々な知恵を育んできました。近年では観光需要やインフラ負荷の増大により、水供給のひっ迫が深刻化しつつあります。そうした状況に応答し、風土の恵みを最大限に活かすために開発に踏み出しました。
本システムは、建築基礎の一部を雨水ピットとして利用し、敷地に降る雨を貯留・ろ過・再生する独自の循環装置です。濾過構成は大きく三層で構成されており、天然鉱石による菌やウイルスの不活化、多層フィルターによる不純物と臭気の除去、さらにウルトラファインバブルを用いた洗浄力の強化を図っています。こうして再生された水は、施設内の生活用水や浴槽水として活用されるほか、災害時には飲料水としても供給可能となっています。※1
特に入浴設備においては、肌に優しい微細気泡を含んだミネラルイオン水に加え、医薬部外品である「光明石※2」を組み合わせることで、清潔かつ温泉効果の高い水質を実現。断水時にも対応可能な貯水能力を有しており、最大約15トンの雨水を貯留することで、5人家族でおよそ15日分の飲料水※3を確保できます。
自然の恩恵をただ享受するのではなく、建築の構成要素として循環の仕組みに組み込むことで、水と共にある暮らしを再構築する雨水濾過浄化システム。水資源の不安定な地域や離島における新たなインフラとして、持続可能な建築の未来を支える存在です。
※1 水質試験を実施、食品衛生法26項目の水質検査をクリア、沖縄県北部保健所にも認可して頂いております。
※2 厚生労働省に認可された医薬部外品です。
(承認番号:14300DZZ00251000) 効果:神経痛・リウマチ・肩こり・腰痛・痔・冷え症・疲労回復など
※3最大15tの貯水を1人当たり1日に必要な水量を200lで算出した場合